恋人よ、僕は旅立つ。
変わっていく僕を赦して。
変容は罪だよなあと、思う。
例えば昨日迄の価値観とか。
例えば明日の身の振り方とか。
例えば今日出逢う君や彼方に対する感情とか。
先生は、『人は知るもののみを見る』と言うし、
実際、見たいものしか見ないようにして生きているのかもしれないけれど、
さァて然して、知ることは仕合せなのかしら。
価値観の変容は、其の衝撃は、婉曲的な殺人。
昨日迄の自分よ、然様なら。バァン。
よく言う話は、よく言うだけの理由が在るのだと思う。
知ることは仕合せなんかじゃ全然ない。
盲目に白痴で箱庭に手枷足枷。
耳を塞いで眸を閉じて、
昨日迄とても愛おしかったものたちの変貌を必死に止める。
其れでも進む腐食を眺めて、きりきり痛む心に非情な振りをする。
変わっていく方が愉しく嬉しく薄情だなんて、誰が決めたんだよと憾む。
変わり果ててしまった愛しいものに、涙しないなんて誰が決めたんだよと咽ぶ。
帰らない、んじゃなくて、帰れないのだ。
置いていかれる方だけが辛く苦しく哀しいなんて、誰が決めたんだ。
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shiratama
autore
HN:
K(かのか)
性別:
女性
職業:
社会人見習い